「モディ化」するインド―大国幻想が生み出した権威主義
を紹介します。
要約:インドはロシアのような国になった
- 「インド=民主主義」が成り立たなくなった
- 民主主義の皮を被った権威主義の国
- 司法、立法、警察を飼い馴らす、ポチ化
- 捜査機関を自由自在に使って反対勢力を合法的につぶす
- 選挙管理、会計は独立性を失った
- メディア、SNSをコントロール、インドに否定的な報道に政府が圧力
- 政治献金しやすくてニッコリなインド人民党
- ヒンドゥー至上主義、特にイスラム教徒を排斥する動き
- インドのGDPの算出方法は疑問を持たれている
- モディ首相との関係が深い、インドの財閥であるアダニ・グループに株価操作疑惑がある
- カナダ国籍を持つインド出身のシク教徒の指導者殺害にインド政府が関与しているとカナダ政府が告発、インドに対する先進国の態度は厳しくなっている
インドの軍事
インドは世界各国から兵器を調達しています。
近年はフランス製のラファールを導入しています。
兵器の調達国を分散することでリスク回避になりますが、利害関係を作って相手国を抑え込む外交戦略と見ることも出来ます。
インドは陸・空・海軍共にロシア製兵器の比率が多く、ロシア依存から抜け出す様子は見えません。
インドはロシアの軍事演習「ボストーク2022」に参加しており、ロシアのウクライナ侵攻以降も、ロシアとの親密な関係を維持しています。
感想:この本を読んでインド株に投資したくなる人はいるのだろうか?
日本株とインド株のプロパガンダ
「日本はアジアの盟主で経済大国!」
「日本株は割安で伸び代のある会社が多い!」
「中国はバブル崩壊!日本は安定している!」
「だから日本株は買いだ!」
外国人エコノミストがこんなことを言っていたら、どう思いますか?
「ぜってー有りえんw」という意見をどこかのコメント欄で見ました。
一方
「インドはこれから人口ボーナス期だ!」
「GDPが急成長している!」
「優秀な人材が多いIT産業で成長が期待できる!」
「だからインド株は買いだ!」
これを聞いたインド人は「日本人は何を言っているんだ」と思うのではないでしょうか。
確証バイアス
投資をしている人は知っているでしょう。
ファンドマネージャーやエコノミストはどういう人種なのかを。
ロシア・中国株をどうやって売ったのか、株価が上がったとき、下がったとき、どういうテンプレートを繰り返していたのかを。
私はソフトバンクのIPOで、自分に都合のいい情報しか見ない確証バイアスに陥り、その結果大損しました。
メディア統制
日本のマスコミは、ジャニーズ問題を報道しなかった「報道しない自由」や偏向報道などの多くの問題を抱えています。
それでも、政治家の裏金問題は報道され、与党の政治家が起訴されました。
インドの場合だと、政権に不利な報道は規制されているので日本のようなことにはならないようです。
プロパガンダと反体制派への弾圧が成功しているので、疑惑は出ても疑惑で終わるということです。
危険思想ですが、インドがある意味うらやましいと思ってしまいました(笑)
日本には陰謀論を垂れ流す政治家が多数いるので。
日本のマスコミは北朝鮮の日本人拉致に沈黙していましたからね。
「証拠がない」「でっちあげだ」というプロパガンダをそのまま垂れ流していたので、外国の実情を偏りなく報道できるようには思えません。
そうなると、著者の湊一樹氏は「でっちあげだ」と攻撃される危険を承知で本書を出版したことになります。
日本人でも本書の著者を叩きたい人は多数いると思います。
インド経済についての番組に著者の湊一樹氏が出演しています。
やはりインドに対して懐疑的な主張をしています。
↓ ↓ ↓
インド人は自国の安全保障の現実を認識していないようである
インド人は中国との国境紛争で劣勢であること、その脅威を認識していないようです。
そこは平和ボケの日本人と一緒かなと思いたいです(願望)。
しかし、軍事に足かせのないインドの方が日本よりも格上だと認めざるをえません。
日本で英語が通じないのはメリットかもしれない
日本人に英語話者が少ないのは外国人の日本市場参入の障壁になっているという意見があります。
その一方で、日本が平和で海外で起きているような紛争がないのは、島国という地理の要因だけでなく、英語が通じないのも一つの理由だと思いました。
失うのが怖いから
ヒンドゥー至上主義の背景にあるのは、グローバリズムやダイバーシティ(多様性)に対する恐怖心ではないかと思いました。
多様性による混沌を目撃して、損失回避バイアスが膨らんだ結果ではないでしょうか。
インドに対する違和感
ロシアのウクライナ侵攻以降、インドに対する違和感が大きくなりました。
ロシアに経済制裁せず、ロシア産原油を買う行動の影響は大きいです。
インド人が騙されてロシア軍に動員されウクライナで戦死したのに、プーチン大統領とハグしたモディ首相には驚かされました。
価値観を共有できるどころか、予想以上に危険かもしれないと思うようになりました。
ナチスに対抗するためにソ連に投資した結果、今も悲劇が起きています。
中国に対抗するためにインドに投資して同じことが起きるのではないかと心配しています。
人権よりも経済・・・経済的に取り込まれると物が言えなくなる
目先の利益に目がくらんだ結果、多くの失敗が起きました。
価値観よりも利害関係を優先すると、個人でも国家のレベルでも良くないことが起きます。
株価とかのレベルの話ではなくて、
人としてどうなのか
根本的な問いの答えを求められていると感じた本でした。